アベノミクスに関する率直な意見と考察

記事公開日2016年7月9日、参議院選挙を明日に控え、本当に直前となってしまいましたが改めてアベノミクスが成功なのか、失敗なのか、それともまだ道半ばなのか、真剣に考えてみたいと思います。

先に断っておきますがこの記事は自民党、安倍政権を批判するものではありません。ただ、アベノミクスという政策に関しては、自民支持者や株で儲かっている投資家からもそろそろ批判が出ていいのではないでしょうか。

今回は主観が多分に含まれ、正式なデータ上は間違った見解があるかもしれません。ご指摘があればコメント欄などで意見を頂けると幸いです。

参議院選挙の争点『アベノミクスの成功と失敗』

vote

自民、公明の与党は今回の参議院選挙の争点を『経済』としています。それは即ち『アベノミクス』を更に加速させていくのか、それとも方向転換が必要なのかを選挙で問うということ。

一方、野党(民進、共産、生活など)の方は最大の争点を『憲法改正』としている印象がありますが、株価が低迷し為替も円高へ推移していることから与党と同じ土俵でも戦えると判断し、『アベノミクス批判』も武器としているようです。

野党は現在の相場状況、2015年度のGPIF損失を国民に訴え、アベノミクスは失敗し終わったと言っています。安倍総理の方は現状の相場状況を踏まえ、アベノミクスが大成功とは言いませんが、「まだ道半ば」だと言っています。これは一体どちらが正しいのか?

明確な経済政策が見えてこない野党の訴えはどうしても響いてこず、「結局は批判したいだけ」という印象が拭えません。ただ、安倍総理の言葉も説得力に欠けてきており、信用が薄れてきてしまっています。

安倍総理は日経平均株価が2万円付近にあった時、「アベノミクスは成熟期に入った」と言っていました。しかし、今回の参議院選挙では「アベノミクスはまだ道半ば、ここから更にギアを上げていく必要がある」と演説しています。これは素直に「見込みが外れた」と言うべきなのではないでしょうか。

勿論、野党のアベノミクス批判に賛同し、短期的な目線でGPIFの損失だけを見るべきではないと思います。アベノミクスが始まってからのGPIFの損益は圧倒的なプラスになっているというデータがあるので評価すべきところがあるのも確かです。

ただ、日経平均株価が2万円を超えたことやGPIFのトータル収支が大幅プラスとなっていることは本当にアベノミクスのおかげなのでしょうか?

NYダウと日経平均株価の比較

NYダウ

7月8日に米雇用統計が発表されたことでNYダウは1年2ヶ月ぶりに1万8000ドルを付けました。日経平均株価の方は1万5000円を割りそうな水準。この差はどこにあるのかを考えてみました。

イギリスの国民投票によるEU離脱、ブレグジットショックによる影響だから仕方ないと言われるかもしれませんが、日本以外の海外市場は早々にその影響を払拭し、株価は完全に戻してきています。日本だけがブレグジットショックの影響を大きく受けている、この状況はしっかり分析する必要があるのではないでしょうか。

『有事の円買い』ということで、どこかで経済危機が起これば円が買われる為、円高となり他国よりも戻りが鈍いのは仕方がないと言われるかもしれません。ただ、『有事の円買い』が起こる理由の一つとして、日銀による国債買い入れがあることも忘れてはいけません。外資は安全通貨と思って円を買いたいわけではなく、日本の中央銀行が買ってくれる日本国債へ資金を逃避したい為、まずはドルを円に変える作業を行っているにすぎません。こういった日銀の動きもアベノミクスの一貫であるということを問題視する必要があるのではないでしょうか。

中央銀行としての責任を放棄してしまった日銀

中央銀行

アベノミクスを批判せざる得ない最大の理由、それは「日銀の金融政策に出口はあるのか?」という点です。

アベノミクスのスタート、それは日銀の異次元金融緩和、黒田バズーカ第一弾となります。これまでになかった金融緩和政策を行い、市場に資金を供給することで円安を誘導、輸出企業を盛り上げ、金融機関も企業に資金を融資し易くすることを目的としています。

この金融政策、黒田バズーカはこれまで三度行われており、最後の第三弾はマイナス金利の導入という初の試みとなります。マイナス金利政策を簡単に説明しますが、これは国民の銀行預金がマイナスの金利となってしまうわけではなく、民間銀行が日銀に預けている預金の一部にマイナス金利を課し、資金のプールをし辛くすることで市場に資金を供給することを見込んでいます。面白い試みですが、これも日銀の国債買い入れと同時に行うような政策ではないだろうと思います。

日銀によるこれらの金融政策、最終的な終わりはあるのでしょうか。金融緩和を辞め、ゼロ金利政策から抜け出し、利上げを行っていくことはできるのか。マイナス金利政策に終わりはあるのか。これらの出口が全く見えないのは将来大きな不安材料になるはずです。

そもそも、中央銀行は市場に流通する資金の量を調整することが仕事であり、蛇口を閉めながらも経済成長が見込める政策を考えるべき機関だと思います。今の日銀は中央銀行の役目、責任を放棄し、不況を理由に資金を際限なく市場に投じているように見えます。

家計を任された主婦に例えるとどうでしょうか。月に10万円で一家の食費、光熱費などを抑え、やりくりしなければならないとします。しかし、それを自分で勝手に予算を100万円まで引き上げてしまっているようなものです。貯金があればまだ許せるかもしれませんが、それを全て借金で賄っているとしたら?今の日銀も同じようなものではないでしょうか。

アメリカのFOMCは世界中の投資家から批判を受けながらも追加利上げを行おうとしています。それが本来の中央銀行の役目だからです。投資家目線で見れば今ここで流通資金を絞るのは辞めて欲しいと思いますが、将来的には日銀の政策は愚作、FOMCの政策が良策になるのではないでしょうか。

過剰需要が市場を破壊する

他にもアベノミクスが犯してしまったかもしれない間違いがあります。これはまだ数年先になってみないと分かりませんが、将来的には反省材料になりうる問題だと思います。

アベノミクスが意図的にバブルを作ってしまったのではないかとの懸念です。バブルによる過剰な需要は市場、産業を破壊してしまう恐れがあります。まずは例を挙げて説明させて頂きます。

シャープを死なせてしまった家電エコポイント

死

日本を代表する家電メーカー、シャープは巨額の赤字を計上し、台湾のホンハイに買収されました。現在も東証の上場は維持していますが、東証2部落ちは決定しており、今後どうなるかはわかりません。

シャープの衰退がアベノミクスのせいだとは思っていません。むしろ第二次安倍政権前の出来事が起因しているのではないかと思います。

2010年ごろに行われた『家電エコポイント制度』を覚えていますか?この制度こそ、シャープを死なせてしまった最大の原因だと思っています。

地上デジタル放送の切り替えに伴い、テレビなどの家電製品を購入するとエコポイントと称して実質的なキャッシュバックを行う制度が行われました。この制度により液晶テレビ事業にバブルが訪れたのです。

家電量販店の一階フロアは液晶テレビがメインとなり、連日の大盛況。この期間にテレビを買い換えようということで顧客が殺到しました。一気に需要が増え、当時の人気商品だったシャープのアクオス、東芝のレグザなどは供給が追いつかず、工場や人員を増やすなどして対応しました。家電エコポイント制度のおかげで過去最大のテレビ売り上げを作ったのは間違いないかと思います。

ただ、このエコポイント制度にも終わりが訪れ、今度は過剰供給となってしまいます。増やした工場、人員は赤字を出し続け、シャープの経営を悪化させることとなりました。約5年後、シャープを実質的な倒産へと追い込んだ元凶、それが家電エコポイントだったと思います。

その後、日立、パナソニック、東芝など相次いで日本におけるテレビ事業からの撤退を発表しています。政府が市場に介入し、産業を破壊してしまった最たる例だと思います。

そして今回、アベノミクスでも家電エコポイントと同じ失敗が繰り返されつつあります。

爆買い終了によるインバウンドバブルの終焉

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アベノミクスの影響によりドル円は一時120円台の円安となりました。これはリーマンショック前の水準です。

この円安により、訪日外国人観光客が一気に増え、「インバウンド」「爆買い」という言葉が市場で大流行し、『インバウンド関連銘柄』が年度を代表する重要テーマとなりました。(「爆買い」は流行語対象にもノミネートされました。)

インバウンド需要の爆発的な増加は円安要因だけでなく、東京五輪の誘致による他言語化の推進、更に好調な中国経済がタイミング良く重なった為と考えられます。

ただ、これも今となってはアベノミクスがもたらしたバブルの一つだったのかもしれません。

2015年と2016年ではインバウンド界隈の事情が一変してしまいました。為替は再び円高となりドル円100円付近へ。中国経済も2015年8月のチャイナショックを皮切りに低迷が続いています。

爆買い需要に対応すべく、百貨店や家電量販店は免税専門店や免税フロアなどに資金を投じましたが、事情が変わったことで収益の目処が立たなくなってしまいました。

ヤマダ電機は新橋の免税専門店を早々に閉店。ラオックスも売り上げの下落が止まりません。

百貨店では三越伊勢丹ホールディングス、J.フロントリテイリングなど免税フロアに客が全く来なくなってしまったとの話もあります。

免税用レジの設置などで対応したドラッグストアやコンビニなどは比較的ダメージは少ないかもしれませんが売り上げ減は免れないでしょう。

インバウンド需要によるホテル不足を解消する為、都市部でホテル建設を進めていた不動産企業、ホテル企業などは今後苦しい展開を強いられるかもしれません。実際、ユニゾホールディングス、共立メンテナンス、日本ビューホテルなど株価が下がり続いています。

インバウンドは前述した通り、アベノミクス以外にも東京五輪の決定や中国の好景気など、様々な要因が重なって起こりました。従って、インバウンドバブル崩壊が全てアベノミクスのせいとは言えません。

ただ、過剰な需要に対応する為、供給を急ぎ、気付けば需要は薄れ過剰供給となってしまった状態は家電エコポイントの頃と良く似ている気がします。

市場に不自然な手が入ってしまったことでバランスが崩れ、産業を壊してしまうということを繰り返してしまっているのではないでしょうか。

家電メーカーの衰退のようなことが家電量販店、百貨店、ホテル業界に起こってしまう可能性も否定できません。

官製相場が市場を狂わせているのではないか

株式市場でも家電エコポイントやインバウンドと同様、『需要の先取り』が起こってしまっているかもしれません。

これは官製相場と言われ、日銀の国債買い、ETF買い、REIT買い、GPIFの株式保有率引き上げなど、市場に行政が介入することで株価は上昇を続けました。本来なら売りが入り調整となる局面でも不自然な上げが頻繁に見られました。一向に下げない相場、これに個人投資家が乗り、バブルを作ってしまった可能性があります。

今がバブルなのか、それとも更なる上昇相場の入り口にすぎないのか、それは後になってみなければわかりません。ただ、本来市場に参加すべきではない者が株価を牽引するという不自然な出来事は後々に大きな歪みを与える可能性が高いと思います。

GPIFは本当にこのままでいいのか

GPIF

GPIFは2015年の通期で5兆円の赤字になったと言われています。(公式な発表は7月下旬予定)

野党はこれを参議院選挙の演説で一斉批判。年金が5兆円失われたことを大々的に煽っています。

一方で与党はトータルの収支を伝え、GPIF改革が失敗していないことをアピールしています。第二次安倍政権発足以来、GPIFの利益は40兆円以上あり、昨年はチャイナショックの影響で5兆円損してしまったが、まだまだトータルはプラスとのこと。

野党の批判も一点だけを都合よく切り取った的外れな意見ではありますが、与党の方向性にも疑問があります。

運用資金130兆円と言われる世界最大規模の投資機関が「これから日本株を買い増します」と宣言し、売るに売れない状況を作り上げ、意図的ではないとしても結果的に株価を吊り上げるような流れを作ってしまったことを手放しで評価することはできません。

利益や損失がどうでも良いわけではありませんが、それ以前の部分で「GPIFは本当にこのままでいいのか」というのが率直な意見です。

日銀が買った国債、ETFやREITは今後どうするのか

国債

GPIFと同じく官製相場と呼ばれる要因を作った日銀の市場介入。特にETF買いはTOPIXが1%下げた時に機械的に買われるのではないかとの噂もあり、底堅い日経平均株価を意図的に作り上げたといっても過言ではありません。

金融緩和策の一貫かと思いますが、これの出口はどうするつもりなのでしょうか。購入した国債、ETF、REITなど、売る気はあるのか、それとも売らずに生涯持ち続ける気がなのか。いずれにしても市場に大きな歪みを与えていることは確かだと思います。

マイナス金利政策の出口はどこにあるのか

出口

黒田バズーカ第三弾として発射した民間銀行へのマイナス金利適用ですが、上昇で反応したのは僅か1日限り。適用範囲が狭いなどという理由からすぐに相場全体を押し下げる負の要因となってしまいました。現時点でマイナス金利の導入が成功だったと言える点は一切見当たりません。

これまで何も考えなしに日銀へ預金し、1%の利益を得ていた民間銀行。事実上の補助金を無くすという金融政策は評価できるのですが、これも同じく出口は考えているのか疑問です。

どうしても今の日銀はノープランで先のことなど全く考えていない組織に見えてしまい心配で仕方がありません。

中身のないものは崩れ易く、壊れたら戻らない

崩壊

共産党の志位委員長が参議院選挙の演説で「イギリスのEU離脱で日本経済が大打撃を受けたのはアベノミクスの結果」と言っています。共産党支持者以外からは「的外れ」と猛反発を受ける発言ですが、実はそこまで的外れでもないような気がしてしまいました。

アベノミクス「3本の矢」では

  • 大胆な金融緩和
  • 機動的な財政出動

は行われましたが、最後の

  • 民間投資を刺激する成長戦略

これは成功には至りませんでした。

結局、アベノミクスで行われたのは金融緩和と財政出動のみで経済を継続的に成長させる企業の育成には失敗してしまったと言えてしまうのではないでしょうか。

円安、日経平均の上昇という外観は立派に作り上げましたが、成長戦略という中身作りができなかったことでハリボテのような状況を作ってしまった気がします。「ハリボテの経済は崩れ易く、壊れてしまったら戻らない。だから日本はブレグジットショックの影響を大きく受けてしまった。」共産党志位委員長が言いたかったことはこういうことなのではないでしょうか。

勿論、だからと言って共産主義や共産党を支持ではありません。企業の内部留保を財政に充てるという共産党の主張は人の財布に手を付けることに等しい発言だと思うので全く共感できないことも念の為に言っておきます。

もしも、アベノミクスがなかったらどうなっていたか

アベノミクスがなかったら

最後に「もしも、アベノミクスがなかったらどうなっていたか」を考えてみました。(もしもの話をしても無意味で不毛なのは分かっていますが)

日経平均株価の急上昇、ITバブル期以来の2万円台回復はアベノミクスの成果と言う意見が多く聞かれます。自分も2万円を突破した時は素直にそう思っていました。

ただ、今になって思うことは「アベノミクス、日銀の金融緩和がなくても日経平均株価は今の水準だったのではないか」ということです。

金融緩和を全く行わず、全く逆の金融政策を取るアメリカ。そのNYダウ市場は高値を維持しています。中国経済にもバブルに近い好景気が訪れました。

結果論であることは間違いありませんが、リーマンショックを乗り越えた先には「無策でも上がる相場」が待っていたのではないでしょうか。

逆に、アベノミクス、日銀の金融緩和という不自然な手が市場に入ってしまったことは今後の混乱を招きそうで心配です。正直なところ、アベノミクスが終わりの始まりになってしまうのではないかと不安に思い始めています。

金融政策の反省、見直しも必要ではないでしょうか

反省

今回の記事は終始、アベノミクス批判となってしまいましたが失敗して欲しいという願望があるわけではありません。参議院選挙を前に野党を持ち上げるといった意図も一切ありません。

自分も株式投資を行っており、現在も保有ポジションがあるのでアベノミクスが失敗して欲しくないという思っています。ただ、今回の安倍総理の演説を見るとこれまでの金融政策に対する反省が全く感じられず不安になったのは確かです。選挙戦中に反省の弁ができないことも理解はできますが。

アベノミクスを成功させる為にも、どこかでこれまでの政策をしっかり見直し、方向転換が必要であればしていくといった柔軟性が必要なのではないかと思っています。